表題番号:2001A-064 日付:2002/05/07
研究課題ヘリオバクテア、緑色硫黄細菌における光合成系の還元力形成と利用の比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 櫻井 英博
研究成果概要

・緑色硫黄細菌における初発電子供与体P840+と3つのFe-Sクラスターの間の電荷再結合反応(Setif et. al. 2001):反応中心には電子供与体側にP840と2つのシトクロムが、電子受容体側には3つのFe-Sクラスターが結合している。3連の閃光で励起した後の吸光度変化をms領域で測定し、見かけの電荷再結合反応速度を得た。P840とシトクロムの間の酸化還元電位差から各閃光照射後のP840+の割合を算出し、真の反応速度を求めた。
・緑色硫黄細菌Chlorobium tepidumの可溶性シトクロムc-554と反応中心間の反応(Itoh et al. 2002):可溶性シトクロムc-554(10 kDa)を精製してその諸性質を調べ、閃光分光法により反応中心との間の反応性について研究した。シトクロムの電子供与の相手としてはP840と結合シトクロムcの2つが考えられる。3連の閃光実験において、1発目と2発目の閃光の時間間隔を変えることの3発目の閃光後のkineticsに及ぼす効果を測定し、理論的考察から、可溶性シトクロムの電子供与先は結合シトクロムであると結論した。
・緑色硫黄細菌Chlorobium tepidumのフェレドキシン-NAD(P)レダクターゼ(FNR)(Seo et al., 2002):FNRは、酸素発生型光合成の還元系の主経路に位置する酵素である。この細菌でもFNRの存在が予期されていたが、解読された全ゲノムDNA塩基配列中には既知の光合成生物FNRと相同性の高いタンパク質をコードする遺伝子は存在しなかった。しかし、ジアフォラーゼ活性を手がかりに精製したところ、NADPH依存性の活性がFNR活性と相関が高いことが分かり、FNRを純化することができた。精製FNRのN末端アミノ酸配列を決定し、遺伝子との比較からこの細菌のFNRはダイマーで、既知のFNRとは全く異なる新しいタイプのものであることが分かった。