表題番号:2001A-041 日付:2003/05/09
研究課題フランス・アンシャンレジーム期の文化統合と「文芸共和国」
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 森原 隆
研究成果概要
 上記のテーマに関して、とくにフランス近世史関連の研究文献や史料についての全般的な調査を行
った。国内では京都大学、同志社大学所蔵の文献を調査・使用し、外国ではフランス国立図書館、古
文書館所蔵の文献史料の調査・収集に努めた。本研究は、17・18世紀絶対王政期のフランスで文
化的統合がいかになされたかを検討するものであるが、16世紀における「レスプブリカ・リテラリ
ア」というラテン語の概念が、17世紀に「レピュブリック・デ・レトル」というフランス語の表現
に転化してゆく過程を、これまでの諸研究から研究史的に跡づけてゆく作業を行った。そして、この
「文芸共和国」概念が、近年フランス史研究でとくに注目され始めている、J・ハーバーマスの「文
芸的公共圏」の理念に通底するものであるとの観点から、この思想史的な論理のつながりについて政
治思想史や社会思想史の研究業績をふまえた論議を展開することに努めた。
 文部省科学研究費補助金(基盤研究B)の共同研究「ヨーロッパ史における分化と統合の契機」の
平成13年度研究成果報告書(代表:前田徹)のなかで「近世フランスにおける文化統合と文芸共和
国」という論文を執筆し、この問題の分析についての一つの展望を開いた。今後も支配文化と民衆文
化との競合の問題、統合と分化にともなう文化変容の問題について考察を深め、「文芸共和国」概念
のもつ意味を問い直してゆきたいと考えている。さらにこの研究課題にかかわる近年の研究を網羅的
に調査・収集し、研究動向や研究ノートとしてまとめることを準備している。このため今後も継続し
てこの調査や分析にかかわる必要を感じている。