表題番号:2001A-022 日付:2002/03/19
研究課題フランス並びにイタリアの公法学説における制度体理論の現代的意義の探求
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助手 江原 勝行
研究成果概要
本報告書提出者による本年度の研究活動においては、近代立憲主義の自明性が揺らいだ結果、その代替理論として現代国家の成立期に登場した、19世紀末から20世紀初頭の公法理論のうちの1つである所謂「制度体理論」の中でも、イタリアにおけるかかる理論の唱道者であるサンティ・ロマーノの公法学説が、イタリアの公法学説史上如何なる刻印を留めたのかという問題に焦点を当てた論稿の発表を以って、前年度から続行されてきたロマーノ学説研究に一応の完結がもたらされた。特に、行政国家の形成という現象に対する理論的支柱の提供、形態学的法理論あるいは規範主義的法理論のその後の発展を予示する理論的言表の内包といった点において、現代の公法学説に対してロマーノ学説が及ぼした理論的影響が早稲田法学誌上において確認された。また、本報告書提出者は、前年度までにおけるフランス並びにイタリアの公法学説を素材とした原理的研究を踏まえ、憲法裁判官による人権保障が両国においてどのように実現されているのかという問題関心の下に、両国における違憲審査制の現況に関する総括を試みる一環として、フランスにおける違憲審査制の発展を語る上で重要な影響を及ぼしたと思われるいくつかの憲法判例及び行政判例を俯瞰し、且つそれらの判例を再構成することにより、フランスにおいてこれまでにも問題となってきた違憲審査制の改革が有するべき方向性を展望する研究を行った。かかる展望の過程においては、フランスの違憲審査制が有する制度上の利点と難点が振り返られ、それを通じて、法令の合憲性審査において協働的・競合的関係を呈している、憲法裁判所である憲法院と最高行政裁判所である国務院という2つの裁判権の間に介在する力学を把握する作業が試みられた。この研究の成果として、「憲法秩序体の保障における≪抽象≫と≪具象≫の狭間――フランスの違憲審査制度に関する改革のベクトルを巡る――」と題する論稿が早稲田法学誌上において発表された。