表題番号:2001A-016 日付:2002/04/08
研究課題修復的司法の可能性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 高橋 則夫
研究成果概要
 今年度は、2001年5月に開催された第79回日本刑法学会の分科会「刑法の目的と修復的司法の可能性」において、オーガナイザーおよび報告を行った。刑法学会において、修復的司法のテーマが取りあげられたのははじめてである。修復的司法が刑事法全体に対していかなる影響を及ぼし、刑事法が今後どのように変革されるべきかについて議論した。これについては、下記の刑法雑誌に全容が掲載されている。
 また、2001年11月の刑法学会東京部会では、9月にベルギーのルーヴェンで開催された「第5回修復的司法国際会議」の概要について報告した。この会議では、「修復的司法とは何か」という定義づけについて、2つの対立を基礎として議論が展開された。1つは、ルーヴェン宣言
(1997年)やNGOの作業グループにおいて採用されている、マーシャルが提示した定義である。すなわち、修復的司法とは、「当該犯罪に関係するすべての当事者が一堂に会し、犯罪の影響とその将来への関わりをいかに取り扱うかを集団的に解決するプロセスである」という定義がこれである。もう1つは、とくにヴァルグレイブらによって主張されている定義である。すなわち、修復的司法とは、「犯罪によって生じた害を修復することによって司法(正義)の実現を志向するいっさいの活動である」という定義がこれである。前者を、純粋モデル(Purist Model)、後者を、最大化モデル(Maximalist Model)と称している。
 私は、下記論文において、最大化モデルが妥当であることを論じた。この論争は、今後も、各国の修復的司法の実践のプロセスとの関係で、さらに展開していくものと思われる。
 さらに、修復的司法という用語は、マスコミでもしばしば取りあげられるようになり、弁護士会や法務省のみならず、民間のレベルでも関心が集まり、下記の講演などはそのあらわれでもある。