表題番号:2001A-008 日付:2004/02/06
研究課題貨幣金融制度とマクロ経済
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 藪下 史郎
研究成果概要
 本研究では『貨幣金融制度とマクロ経済』の問題を理論的かつ歴史的に分析することである。これまで数年間にわたって行ってきた『不完全情報と金融市場』に関わる研究の延長線上にあるもので、情報の不完全性や取引費用の観点から貨幣金融制度の役割およびその発展過程、さらにはそれらとマクロ経済との関連を考察するものである。
 完全情報や完全競争市場を前提とした新古典派経済学においては、貨幣、金融機関また制度は重要な役割を果たさないが、不完全情報や取引費用が存在し、市場が不完全な経済においては、貨幣制度や金融システムなど制度のあり方によって、経済活動や経済発展過程が大きな影響を受けることになる。またこうした問題を分析するためには、経済と政治制度や政治過程との関連を重視した政治経済学的アプローチが不可欠になる。より具体的には、①内生的成長理論における貨幣の役割と貨幣金融制度、②中小企業金融問題と経済発展、③新制度経済学派のアプローチからの経済制度の特徴などの問題を考察した。
 こうした研究結果は『貨幣金融制度と経済発展:貨幣と制度の政治経済学』(有斐閣:2001年9月)としてまとめ刊行した。また大学内外の研究会で発表をするとともに、2002年3月末には上掲の内容等に基づき、南開大学大学院金融学部(中国・天津市)において集中講義(4日間で3時間を6回)を訪問教授として行った。講義のタイトルは『不完全情報下の金融システムと経済発展』であった。常に20~30名の学生たちが聴講し、また彼らは大変熱心であり、授業は成功したと思っている。また急成長する中国経済を見ることによって、今後進める予定である中小企業金融や開発金融に関する研究意欲がかきたてられた。