表題番号:2001A-003 日付:2002/05/13
研究課題わが国における財政再建と財政・社会保障制度の持続可能性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 貞廣 彰
研究成果概要
 本研究の目的は標記のテーマを分析するための道具である世代重複モデルを構築することである。以下の6つのテーマについて研究を行なった。
(a)まず、多世代重複モデル(OLG)の原型としての2世代重複モデルの構築をおこない、その特性を考察した。具体的には家計部門、企業部門をミクロ経済学の視点から定式化し、各市場の均衡条件を加えて一国のOLGモデルとする。その上で、資本ストックの移行式が求められる。本モデルの特性を見るために、貯蓄率変化の影響、技術進歩の変化の影響、人口減少の影響について試算を行なった。
(b)ついで、上記のモデルに政府部門の導入し、モデルの拡張を行なった。そのうえで、政府支出のファイナンス方法として、若年者の税負担、老年層の税負担、国債負担という負担方法の違いが経済にどのような影響を与えるかについて分析を行なった。
(c)ついで、年金部門を導入して、賦課方式と積立て方式の違いがマクロ経済や各世代の世代会計にどのような影響を与えるかについて分析した。
(d)さらに本モデルに貨幣を導入して物価の内生化を行ない、貨幣の増大がマクロ経済がどのような影響を与えるかを分析した。
(e)さらにこのモデルを発展させて2世代―3カ国連結モデルを構築し、貯畜率、技術進歩率、財政支出などの外生変数の変化がマクロ経済や経常収支にどのような影響を与えるかかを分析した。
(f)以上のような2世代OLGモデルを踏まえて、多世代OLGモデルの定式化を行なった。ここでは世代を20歳から75歳までの55世代にわけ、それぞれについて、家計部門の詳細な定式化を行なうとともに、政府部門や社会保障部門について、現実の制度を可能なかぎり正確に描写するような定式化を行なった。
(g)さらに年金部門については現行の修正賦課方式から完全積立て方式への移行期の定式化を行なった。
(h)以上のモデルは完全雇用を前提としたものであった。そこで、次に不完全雇用を前提としかつインフレ率を内生化した簡単なモデルを構築した。その上で、ゼロ金利、マイナスインフレ経済からの脱却の方法を探るための分析を行なった、特にここでは「インフレターゲット」と「為替レートの一時的固定制」について分析した。また財政政策、金融政策、サプライサイド政策の比較分析を行なった。

今後の研究課題はこのようなモデルを用いて財政と社会保障制度の持続可能性についての詳細な分析を行なうことである。