表題番号:2000C-102 日付:2002/04/26
研究課題千島列島におけるアイヌ文化の形成・拡散・変容過程に関する考古学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 菊池 徹夫
研究成果概要
 本研究課題は、当初、採択額は2000および2001年の2年間で計270万円であったが、2001年度については国際共同調査・研究のパートナーである米・露両国のそれぞれに複雑な都合により、ついに現地調査が不可能な事態となり、ために科研費の申請も見合わせざるを得ないこととなった。このため、残念ながら特定課題研究助成費も実質2001年分131万円は減額され、2年間で2000年度分139万円のみの交付となった。このことはまことに残念ではあったが、しかし、2000年度分139万円を「千島列島におけるアイヌ文化の形成・拡散・変容過程に関する考古学的研究」という申請課題の趣旨に沿う方向で有効に使用させていただいた。
 まず、第1に研究代表者の菊池はイギリスに赴き、ケンブリッジ大学等において課題に関する資料調査、情報交換を行い、一方、国内各地、主として北海道においてアイヌ文化の形成についての研究を行った。その成果の一部は、すでに論文、講演記録等として公表している。また、早稲田大学博物館所蔵のアイヌ文化資料たる「土佐林コレクション」をデータベース化し、ホームページ上で公開しえたことも、本課題に関連する成果として特質してよいであろう。
 第2に、研究分担者の北海道開拓記念館学芸員、手塚薫は、研究分担予定者の1人であったワシントン大学Ben Fitzhugh氏の配慮もあって、幸いウラジオストック科学アカデミーの調査船「オケアン」に便乗する機会を得、北部千島列島のシュムシュ島、パラムシル島から、中部千島列島のウルップ島までを移動しつつ、先史・人類学的調査を行うことが出来た。マツワ島で縄文土器を、ウルップ島ではオホーツク式貼付文土器を発見した他、オンネコタン島では環状の周堤群からなる特殊な遺構を確認するなど、考古学的には未踏の地域において、アイヌ文化の形成という本課題の研究にとって注目すべき、重要な成果を挙げることが出来た。改めて本課題に対し研究助成費が与えられたことに感謝したい。