表題番号:2000C-004 日付:2004/11/19
研究課題脳内ペプチドの下垂体および正中隆起部レベルにおける作用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 菊山 栄
研究成果概要
研究期間の2年間で以下の成果を得た。
1)我々はカエル脳よりC末端にPhe-Met-Arg-Phe-NH2の配列を有するアミノ酸12残基からなる新しいペプチドを単離した。その抗体を作製し、免疫組織学的に局在をしらべたところ正中隆起部に結末を有することからこのペプチドが下垂体機能を調節している可能性が示唆された。このペプチドを下垂体培養系に添加し、各種下垂体ホルモンの放出をしらべたところ、成長ホルモン放出を特異的に促進することを見い出した。このペプチドは試験管内でだけでなく、動物に静脈注射しても活性を示すことも確かめた。
2)哺乳類の胃で発見されたグレリン(Ghrelin)は成長ホルモン放出を促進する事が知られているが、我々はカエル胃より2種のグレリン相当物質を単離した。この物質は28および29アミノ酸残基からなり、成長ホルモンの他にプロラクチンの放出を促進することを明らかにした。この物質の前駆体遺伝子は胃、腸、膵臓、精巣で発現しており、一般循環によって下垂体に達して作用すると考えられる。
3)カエル脳下垂体の甲状腺刺激ホルモン含有細胞にアクチビン/インヒビンのβBサブユニット免疫陽性物質の存在を認めた。そこでアクチビンBやインヒビンBが下垂体ホルモンの放出を傍分泌的に調節している可能性をさぐるためアクチビンBおよびインヒビンBの各種下垂体ホルモンの放出におよぼす影響をしらべた。アクチビンBは生殖腺刺激ホルモンの放出を促進したが、インヒビンBは単独では効果を示さず、アクチビンBによる生殖腺ホルモンの放出活性上昇を抑制することを確かめた。
4)我々は海外共同研究者との研究によりカエル脳より成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)およびPACAPの単離、同定、その前駆体遺伝子のクローニングおよび生理活性をしらべた。生理活性に関しては両者に成長ホルモン放出活性が認められた。魚類ではPACAPのみに、哺乳類ではGHRHのみに活性があることを考えると、ホルモン分子(および受容体)の進化という観点から興味ある発見である。