表題番号:2000C-003 日付:2003/05/10
研究課題アルフレッド・シュッツによる蔵書への書き込みの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 那須 壽
研究成果概要
(0) 多岐にわたるアルフレッド・シュッツの思想と社会(科)学理論を、その全体にわたって解明していくためには、彼の思想がどこから来てどこへ向かおうとしているのかが問われなければならない。そうした課題を背景にもつ本研究では、彼が自らの蔵書に書き込んでいるメモ、すなわちシュッツとそれらの著書の原著者との対話を、そのすべてにわたって検討し、彼の思考の過程を辿ってみることが目指される。
(1) そのための基礎作業として、まず、コンスタンツ大学の「シュッツ文庫」に一括、納められている彼の蔵書の全ページをめくることによって、アンダーライン、様々なマーク、コメントが書き込まれているものを選び出し、それらを逐一、検討することによって、タイプ原稿化するに値すると思われる146冊を選定した。
(2) 次いで、すべての「書き込みメモ」の解読に着手した。その作業は、海外共同研究者のイルヤ・スルバールが中心になって進め、その途中で、研究代表者と他の共同研究者に解読のハードコピーを配布し、各自がそれぞれを検討し意見交換を行うという過程を踏むことによって、解読作業の精確を期した。
(3) それと同時に、本研究に基づく国際会議(2003年開催予定)で集中的に議論すべき、シュッツが自らの思想を形成していく上で大きなウェイトを占めていた彼の「アカデミック・パートナー」を選定することを念頭に置いた、「書き込み」の分析にも着手した。
(4) 現在、22,500ページに及ぶすべての「書き込み」のタイプ原稿化が完了し、原著書の当該ページとともにそのすべてをマイクロフィルムに収める作業が進行中である。
(5) その作業も、2002年5月中旬には完成する予定であるので、その完成を待って、そのすべてのコマをハード・コピー化し、それと並行して「書き込み」の目録を作成し、共同研究者がそれぞれのテーマに沿った分析を行いながら、彼の理論とアカデミック・パートナーたちとの理論的関係について総合的な探究が開始される。