表題番号:2000C-001 日付:2003/05/07
研究課題清末・民国初期の巷間資料による庶民分化流通形態の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 岡崎 由美
研究成果概要
 中国庶民文化の「流通」の力学をテーマとし、文学・芸能・芸術・民間信仰・言語など多層面の相互の関わりから、中国近世近代庶民文化の生成・流布・変遷・交流といった「流通形態」のダイナミズムを解明する研究モデルを提示することをめざした。対象としては、印刷資料として広く流通しながら従来十分に研究対象とされてこなかった宗教結社の説教冊子や布教用唱本、民俗絵図資料等といった民間巷間資料に注目した。
 本研究で扱う民間巷間資料は、その整理方法そのものが従来の書誌学の領域を越えた新しい研究分野であり、その比較的大きなコレクションである本学中央図書館所蔵の風陵文庫は質・量ともに問題解決のための基礎となる巷間の第一次資料として、内外からその有用性が注目されている。そこで、マイクロフィルムに撮影し、見開き毎のJPEG画像としてファイル管理を行って、資料全体を容易に閲覧・研究することを可能にする基盤作りをめざした。本研究期間中に風陵文庫俗曲部分(F400Z)について撮影を終わり、俗曲版本を系統的に管理するためのファイル名賦与を始めた。このファイル名賦与ならびにフォルダ管理には、従来の書誌学を超え、多くの俗曲資料に応用できる体系を考えねばならない。次なる寶巻部分(F399)の版本構成をふまえながら、将来の俗曲データベースに向けて問題を洗い出しつつ作業を進めている。
 また、メンバーが大陸・台湾に赴いて各地コレクションを調査し、他所蔵機関の清末・民国初期の巷間資料と対比することで、対象資料のより全面的な把握を目指している。台湾中央研究院文哲所、上海市復旦大学図書館などで更なる調査の必要なコレクションを発見した他、研究期間中に来日した海外研究分担者とも、来日中の研究交流のほか、今後の資料収集・研究について具体的な協力を確認することができた。本研究課題の活動は中国古籍文化研究所に受け継がれ、成果を随時公開していく。