表題番号:2000A-911 日付:2005/03/01
研究課題クエン酸系試薬によるZnTe表面の改質と高性能純緑色発光素子開発への適応
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 材料技術研究所 教授 小林 正和
研究成果概要
 ワイドギャップII-VI族化合物半導体は禁制帯幅が広いことから可視光領域の発光・受光素子用材料として注目されている。特に近年はその量子ドット構造に関しては特徴的な発光特性が期待できることより注目されている。量子ドットを電子素子として作りこむことを想定するとエピタキシャル膜中に量子ドットを作りこむことが課題となってくる。我々は特に基板の中でも、結晶性がよく、広く普及されつつあるZnTe基板に注目し、その基板上に量子ドットを形成することを意図した。
 基板が普及しつつあるとはいうものの、まだ、エピタキシャル成長用の基板表面処理技術が確立していないことは、量子ドットの成長に対して大きな問題点となっている。そこで、さまざまな化学エッチャントにより基板表面を処理し、エッチングの表面平坦性・表面ストイキオメトリ・表面酸化膜(保護膜)の厚みなどについて検討を行った。
 基板の化学処理方法としては、通常の化合物半導体で広く使われている硫酸系の試薬、HBr系試薬、クエン酸系試薬などを用いた。まず、表面平坦性の観点では硫酸系の試薬を使った場合には鏡面が得られなくなるほど悪化してしまうため、適当でないとの結論に達した。その他の試薬では、薬品濃度が表面平坦性の再現性に影響を与えるが、条件を十分に設定することにより、エピタキシャル膜の成長に利用できる程度の表面平坦性が得られることがAFM観察より明らかになった。また、HBr系の試薬を用いた場合は表面酸化膜の厚みが薄いこと、クエン酸系の試薬を用いた場合には表面がTeリッチになることなどがXPS測定やAES測定より明らかになった。
 今後は表面平坦性がエピタキシャル成長としても対応可能であると考えられる試薬を用いて表面処理を行い、その表面上に実際にZnTe層や量子ドット層等の成長を試み、どの処理方法が量子ドット形成に最適であるかを明らかにする予定である。