表題番号:2000A-891
日付:2002/02/25
研究課題音楽療法によるリラックス効果の検討
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学部 | 教授 | 野村 忍 |
- 研究成果概要
- 音楽療法が医療や福祉あるいは健康産業など様々な分野で用いられているが、音楽の持つリラックス効果の実証的研究は少ない。本研究の目的は、リラックスビデオ(音楽と映像)が嫌悪ストレス刺激後の回復にどのような影響を持つかを実験的に検討することである。対象は、20人の大学生(男性6人、女性14人、平均年齢21.2歳)である。被験者は、10人ずつビデオ群と統制群の2群に振り分けられた。ビデオ群は、最初に嫌悪ストレス刺激(眼科手術の映像:ストレス期)を受け、次にリラックスビデオを鑑賞(リラックス期)した。統制群は、同じ嫌悪ストレス刺激を受けた後、青い画面を見ながらの安静条件をとった。それぞれのセッションの前後で、皮膚電気伝導水準、皮膚表面温度、心拍数の生体情報と2つの自己記入式心理検査(気分調査票、リラックス尺度)が計測された。測定されたすべてのデータは、被験者毎にベースラインを基準として、ストレス期およびリラックス期の変化量を算出し、2×2の2要因分散分析を行った。被験者間要因は群(ビデオ群・統制群)であり、被験者内要因は測定時期(ストレス期・リラックス期)である。生理的指標に関しては、皮膚伝導水準、心拍数において統計的に有意な変化が認められ、リラックスビデオが生理的な安静状態の回復に効果があることが示された。さらに、ビデオ群においては気分調査票の不安得点の有意な減少が認められ、リラックス尺度においては気分の高揚感の増加と身体の緊張感の低下が有意であった。以上の結果より、リラックスビデオにより、統制群に比べて嫌悪ストレス刺激後の生理的、主観的なリラックスの回復効果が得られやすいことが示唆された。今後の研究課題として、他のリラクセーション技法と比較検討して音楽療法の持つ特異性の検証を行いたい。