表題番号:2000A-886 日付:2002/02/25
研究課題グローバル化の時代と移行経済の発展
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 トラン・ヴァン・トウ
研究成果概要
 計画経済から市場経済への移行過程にある国の経済発展は経済グローバル化の時代にどのような問題に直面し、どのような開発戦略が有効であろうか。
 本研究はこの課題についての接近方法と分析枠組みを構築し、ベトナムと中国のケースの考察を通じて移行経済の開発を理論的・政策論的に追究しようとしている。
接近方法としてまず2つのステップでこの課題を分析し、最後に総合的に検討することである。第1のステップは移行経済と経済開発との関係を明らかにし、移行過程が開発過程でもあるといった日本型開発経済学の立場から市場の育成、生産力の発展、所有形態の改革などの問題を考察する。この立場から移行戦略として漸進主義が有効であるとの結論を確認する。
第2のステップは移行過程に対するグローバル化の影響を分析することである。移行は市場の育成・発展過程であるので国民経済の統合過程であると捉えられるならばグローバル化への対応は国際経済への統合問題であると言える。アジア通貨危機の教訓は、国際経済への統合(資本市場などの自由化)の急ぎが経済の不安定をもたらし、持続的発展を阻害するということであった。国民経済の統合度合いが低い移行経済の場合、グローバル化への統合のリスクがさらに大きいのである。ここで、国際統合プロセスの速度と順序が重要になるのでここでも一種の漸進主義が必要であるとの結論を到達した。
本研究は以上のような接近方法で総合的な分析枠組みの構築を試みたと共にベトナムの移行、開発と国際統合の諸問題を国営企業の改革と外国直接投資を中心に検討した。ベトナムの漸進主義は理論的な予想と中国の経験と違い、約15年間の移行過程において国有部門が国民経済の中の位置付けとして低下しなかったという特徴を示したのである。これは、外国企業との連携が強まった国営企業が外国直接投資流入拡大と共に発展したためである。これは、移行過程に与えたグローバル化の影響として注目すべきケースでさらに究明していきたい。