表題番号:2000A-881 日付:2002/02/25
研究課題免疫エージェントによる最適設計に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 宮下 朋之
研究成果概要
 機械構造物の設計においては、複数の指標の向上を実現する設計解を、多くの制約条件を充足するように見出す必要がある。その設計解を求める手段として数理計画法が用いられている。一方、自然界に目を向けると、多くの制約が存在する自然環境において、多くの外的要因から生命の維持を実現している生命体が存在する。自然界における最適性を実現する仕組みとして、ほ乳類の持つ免疫機構が存在し、非常に多くの種類からなる抗原から、細胞体の維持を実現するために、抗体が大きな役割を果たしている。本研究では、この点に着目し、エージェント技術により、免疫機構をモデル化して、そのうち、抗原-抗体反応を利用して最適設計を行う方法として検討することを目的とする。ここでは、設計対象となる構造物の風荷重や地震などの外的要因を抗原と考え、部材配置や寸法などを内的要因として設計において定めるパラメータ(設計変数)を定める手法として、新たに提案した。いくつかの計算例によって、既存手法と比較することによりいくつかの点が明らかになった。(1)寸法最適化問題および位相最適化問題において、構造物の外的要因のうち、最も構造物の設計指標の悪化を最小限にとどめることができる設計案を導出できることがわかった。(2)多様な抗原に対する防御システムであるため、複数の極値を持つ多峰性の設計問題の場合においては、複数の局所的最適解を導出でき、単峰性の設計問題の場合には、最適解が求まることに加え、その周辺の解を導出でき、設計変更において、最適解が利用できず再計算を実行しない場合に、次善の解として利用できることがわかった。一方、計算中において設計候補の評価回数が多く必要となる欠点が認められた。この点を克服するために、(1)設計変数に関する目的関数や制約条件の感度を利用する種類の既存手法と組み合わせた計算法の構築や(2)応答局面法による近似的な局面生成技術を検討することが必要であると考えられ検討を加えている。