表題番号:2000A-880 日付:2002/04/01
研究課題ディラック作用素の一般化としての一階共形不変微分作用素の研究及び数理物理への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 本間 泰史
研究成果概要
 リーマン多様体のリーマン計量とスピン構造から定まる微分作用素のスペクトル構造から多様体の幾何構造を調べることを本研究の目的とする。そこで、リーマン多様体上の幾何学的微分作用素の構成要素と言うべき一階共形不変微分作用素全体を統一的に扱うことにする。まず、スピノール束上のディラック作用素がクリフォード代数を用いて定義されることに注目し、一般の同伴束上にクリフォード準同型という概念を構築した。このクリフォード準同型はスピン群の表現論を用いて定義されるものであり、表現論との関係を明らかにすれば、クリフォード準同型の性質がわかるはずである。実際、高次のカシミール作用素とクリフォード準同型の関係を明かにし、クリフォード準同型のスピン群の表現を用いた具体的な公式を得ることに成功した。このため、クリフォード準同型並びに一階共形不変微分作用素が、かなり扱いやすくなったと言える。そして、応用する上でクリフォード準同型のある意味での可換性に対する公式を示さなければならないことも明らかになった。3次元、4次元の場合には、この可換性に対する公式を得ることに成功したのであるが、高次元の場合は未解決であり現在取り組んでいる問題の一つである。低次元の成功により、低次元多様体の幾何学(特に、4次元多様体のツイスター幾何学)との関係を幾つか示すことができた。例えば、高スピノール場に作用するディラック作用素の最適な下からの固有値評価を得た。最適という意味は評価において等号が成立する多様体が存在するということである。実際、標準的球面が等号を満たす。また、クリフォード解析学の一般化となるベクトル値球面調和多項式に対して、クリフォード準同型の理論を応用することにより、ある表現空間の既約分解を行い、既約成分の具体的な表示を行うことに成功した。今後の課題として、高次元の場合の可換性に対する公式、共形不変微分作用素の核の幾何学的意味付け、同伴束上の熱核の漸近展開とその応用、微分作用素の固有値の上からの評価と曲面論との関係の考察などが挙げられる。