表題番号:2000A-844
日付:2002/02/25
研究課題外部的財移転の受入国の経済成長に与える効果に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 商学部 | 助教授 | 高瀬 浩一 |
- 研究成果概要
- 最初に、受入国が新古典派成長モデルで表されるケースを考える。資本と労働の2つの要素を使い、1財を生産する場合、受入国の経済成長の要因は資本量と労働量の増加の2つに集約される。したがって、外部的財移転はそれら2つの経路で成長に寄与し、その使用方法によって、資本か労働のどちらに有効であるかが分類できる。ただし、労働に関しては、そのフロー(食料援助など)が労働量自体に直接影響すると予測されるが、一方、資本に関しては、そのフロー(直接投資など)ばかりでなく、ストックが重要となる。統計分析では、単純化のため、コブ・ダグラス型生産・効用関数を仮定し、資本ストックを計算する方法として、PI法(Perpetual Inventory Method)を用いることにする。
次に、受入国が内生的成長モデルで表されるケースを考える。生産設備などの物理的資本に加え、3つ目の生産要素として、労働者の知識や技術レベルを表す人的資本を導入する。それ自身の量が大きければ大きいほど、かつ、その獲得のために費やされた(教育の)時間が長ければ長いほど、人的資本ストックも大きくなると仮定する。すると、個人が労働と教育との間で時間選択する場合、極値以外の安定定常解は残念ながら存在しないことになる。つまり、全く教育投資しない(新古典派モデルと同じ)か、あるいは、全ての時間を教育に回す(財生産が全く行われない)ことになる。したがって、閉鎖経済においては、人的資本量が現存量に依存するモデルは、ほとんど不可能となる。そのため、可能性があるのは、人的資本ストックが教育時間のみに依存し、かつ、その効果が逓減するようなモデルや、労働時間に応じて人的資本が自然に蓄積されていくようなモデルだけとなる。もちろん、開放経済においては、利子率が外部から設定される(小国の)場合、極値以外の解も存在し得る。どちらにしても、安定定常解が存在するためには、モデルはかなり制限されるので、厳密な形での統計分析には困難が予想される。