表題番号:2000A-827 日付:2002/05/07
研究課題ペルーにおける「混血」文化・アイデンティティ論の最新動向分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 専任講師 後藤 雄介
研究成果概要
 本助成を受けての直接的な研究成果は、残念ながらまだ論文という形をなしてはいない。それについては、共同研究員を務める国立民族学博物館の研究誌『地域研究論集』、もしくは本学紀要への投稿を目指して執筆中であるので、いましばしの猶予をいただくほかはない。とりあえずの成果として、2点の評論を挙げておく。
 「ペルー演劇をめぐる状況」は、本助成によりペルーに研究出張した際におこなった取材に基づいて書かれたものである。取り上げた劇団は、現代ペルー文化・アイデンティティの「混血」状況をいかに表現するかを活動の中心に据えており、それは本研究の中心課題でもあるホセ・マリーア・アルゲーダスというペルーの作家の思想とも密接に関連している(実際、同劇団はアルゲーダスの小説に基づいた作品を上演している)。
 他方、「『封殺された対話』再読」は、「ペルー大使公邸占拠事件」(1996年暮れ翌97年4月)を事件の当事者(人質)かつ思想史研究者として分析した小倉英敬の著書に対する書評である。小倉が同書で展開している「チョロ」というペルーの新たな主体をめぐる議論は、やはり「混血」的アイデンティティのあり方に絡んでくる重要な論点であることを指摘している。なお同評論は、インターネット上でのみ閲覧可能なメディアに掲載される。
 参考までに、論文「ニューヨークのヒスパニック/ヒスパニックの<ヌエバヨール>」にも触れておく。ニューヨークにおけるおもにプエルトリコ系のアイデンティティ問題を論じた同論文は、直接的には青山学院大学総合研究所学際研究プロジェクト「ニューヨーク都市文化研究」の成果であるが、ヒスパニックの複合的アイデンティティに対する注目は、本研究での「混血」に寄せる関心と基本的に通底している(当初はニューヨークのペルー系移民を対象とする予定もあったが、資料不足により断念した経緯もある)。両者は、別物というより、同一関心の多面的発展と理解されたい。

追記
 下記の通り、直接的研究成果を本学紀要に発表した。(2002年5月7日)