表題番号:2000A-812 日付:2014/03/05
研究課題炭砿地域における住宅施策に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 助教授 嶋﨑 尚子
研究成果概要
 本研究は、炭砿地域における住宅施策に関する文書資料を収集・解読することを目的としている。具体的には、1997年度より調査研究を進めている旧常磐炭砿㈱の大閉山(昭和46年)前後の住宅問題について、いわき市ならびに福島県を中心とした産炭地域の行政サイドの施策に関する文書資料を収集し、データ・ベースを作成し、読み解く作業をすすめた。以下の2側面からの読み解きを行っている(研究成果欄参照)。
 まず、第1に閉山直前から昭和47年までの炭砿住宅の再編過程を文書資料から明らかにした。炭砿地域における労働者の集住は、労働力再生産にむけての企業体による労務管理の象徴的な様式である。このいわゆる「炭住」として知られる社宅は、炭住区を形成し、上下水道、電気、ガスなど固有のインフラ・ストラクチャーを形成していた。いわば1つの生活世界を構成していた炭砿住宅区は、大閉山を機にどのような転換を迫られたのか。5,000戸、8,000名からなる炭住区の運用は、閉山協定の中心的争点の1つでもあった。閉山協定において労使は、炭砿労働者の閉山離職後1年6ヵ月間の居住を確定した。そのうえで、旧常磐炭砿㈱は住宅の集約ならびに解体を基本方針とする長・短期運用計画を策定し、運用に着手した。
 第2に、産炭地域振興政策における住宅・生活環境整備の概要をとりあげた。上記の運用計画は、「住宅地区改良法」の適用による公営住宅建設ならびに、公営住宅への炭砿離職者の優先的入居など、いわき市を中心とした行政体との連携のもとで進められた。ここでは、戦後の産炭地域振興政策における住宅・生活環境整備の概況を整理したうえで、雇用促進事業団による住宅対策・移住対策を概観した。
 今後は、①常磐炭砿㈱の住宅運用と産炭地域振興政策との連携過程を明らかにすること、②昭和47年以降の炭砿住宅区の再編過程へと観察時間を拡大し、読み解くこと、この2点が課題となる。