表題番号:2000A-801 日付:2004/01/05
研究課題非厚生主義的帰結主義および非帰結主義に基づく道徳原理の公理化について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 須賀 晃一
研究成果概要
 このプロジェクトでは、道徳原理(道徳判断ルールとして定式化した)のもつべき特徴を公理として設定し、社会的選択理論において開発された方法を援用しながら、いくつかの公理を同時に満たす道徳判断ルールを特定化するという作業を行った。中核となる公理には衡平性に関する2つの種類の公理がある。1つは人間を衡平に扱う匿名性の公理であり、もう1つは行為を公平に扱う中立性の公理である。民主的社会の道徳原理を考える限り匿名性が満たされなければならないことは明らかであろう。問題となるのは中立性であり、これをいかなる情報的基礎に基づいて定式化するかで、道徳原理の種類---厚生主義的帰結主義、非厚生主義的帰結主義、非帰結主義のそれぞれに基づく道徳原理---を表現することができると考えている。このプロジェクトを通じて得られた成果は、次の2つのディスカッション・ペーパーにまとめられた。
1. An Axiomatic Approach to Principles of Morals.
2. Self-consistent Neutrality and Pareto Efficiency in Principles of Morals.
第1論文の主要命題によれば、匿名性と二項独立性を満たす道徳判断ルールは強パレート原理を満たし、そのクラスの中で最大のルールは他者の反対がないときのみその行為を容認するというルールである。また、匿名性と二項中立性、強パレート原理を満たす道徳判断ルールの中で最大のルールは、他者の反対がないときのみその行為を容認するというルールである。第2論文の主要命題によれば、匿名性と自己整合的中立性、無関連な行為からの独立性を満たす道徳判断ルールの中で最大のものは、当該個人が無条件的選好をもつときのみその個人の行為を容認するというルールである。また、この自己整合的道徳判断ルールが他者の反対がない行為のみを容認するならば、実現される状態の集合にはパレート最適な社会状態が含まれる。