表題番号:2000A-526 日付:2004/05/18
研究課題人間-熱環境系快適性数値シミュレータの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 田辺 新一
研究成果概要
 近年、環境共生建築手法や電気自動車といった地球環境問題を背景とした新技術が数々提案されており、これら新技術の導入には、在室者、乗員の要求条件である熱的快適性を客観的に評価できるツールが不可欠となっている。しかし、1970年代までに提案された、代表的な温熱指標であるPMV(予想温冷感申告)やSET*(標準新有効温度)は、比較的均一で時変動の少ない環境を対象としており、今日問題とされているような分布や日射があるような環境や非定常環境の快適性評価は取り扱えない。そこで、本研究では分布や時変動のある温熱環境における「人間―熱環境系快適性数値シミュレータ」の構築を目的とした。要素技術を確立し、それらを統合化し分布や日射影響を受ける環境での温熱快適性を予測する数値シミュレータの開発を行った。
 具体的には、以下の項目に関して研究を行った。
1)人体部位分割体温調節数値計算モデルの開発:65部位分割数値体温調節モデルは末梢部位の血流に関するモデル化が単純化されているため、特に寒冷環境での被験者実験結果と予測値との差異が大きくなる傾向があった。そこで、65部位分割数値体温調節モデルをベースに末梢血流を考慮した新たなモデルの作成を行った。
2)移動計測カートの開発:測定器に求められる精度の資料収集を行い、カートの試作を行った。そのカートを用い実際のフィールドにて室内、屋外環境の測定を行い、その有効性を確認した。実測ツールとしての改良点を把握した。
3)非定常環境における被験者実験:建築内と屋外とをつなぐ緩衝空間を対象とし、緩衝空間の温熱環境が通過後の人体に与える影響について被験者実験を行った。生理学的データと共に被験者の心理量に関する申告も記録し、数値体温調節モデルの生理量予測結果から感覚量へフィードバックする際の基礎的データを収集した。