表題番号:2000A-503
日付:2002/05/08
研究課題伊賀国黒田荘の基礎的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 文学部 | 教授 | 海老澤 衷 |
- 研究成果概要
- 伊賀国黒田荘は、荘園研究史上、最も著名な荘園の一つであるが、
この荘園に関する基礎資料の収集は未だ十分には行われていない。
故竹内理三氏によって『伊賀国黒田荘史料』の第一巻および第二巻
が刊行されたが、鎌倉時代初めの建保6年(1218年)までの史
料が載せられているすぎない。そこでまず、東大寺文書を中心に黒
田荘の1219年以降の史料を収集することに重点を置いた。
その結果、2002年3月までの段階で、518点の史料を収集
し、『海老澤ゼミテキスト 東大寺文書伊賀国黒田荘史料ver2』を
作成した。デジタル化できたこれらの資料は、今後様々な利用が考
えられる。
同時に、「伊賀国黒田荘における寺僧私領の展開と終焉ー畿内に
近接した東大寺領荘園の特質ー」をテーマとしてこの荘園の特質
を究明した。 その内容については2002年4月鎌倉遺文研究会
第80回例会で報告した。
黒田荘における寺僧私領の展開は、奈良盆地より約半世紀遅れ、
12世紀前半から見られるところであるが、一円不輸後も荘内の広
汎な地域に存在し、東大寺の支配にも大きな影響を及ぼしたが、
14世紀に入るころには、その地子収取が難しくなり、元徳元年
(1329年)には、現地荘官が地子徴収に一切協力しない姿勢を
示し、事実上寺僧私領は終焉を迎えたことを明らかにした。
以上のような成果を上げてきたが、資料収集はまだまだ完全とは
言えない。特に、戦前に東大寺から流出し、個人所蔵となっている
文書については多く問題が残されており、十分な調査が行われてい
ない。今後の課題といえよう。