表題番号:2000A-238 日付:2004/11/24
研究課題文章の読解と談話の聴解による要約文の表現類型の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 日本語研究教育センター 教授 佐久間 まゆみ
研究成果概要
本研究は、日本語の文章の読解と談話の聴解による要約文の表現類型の解明を目的とするものであるが、以下の方法
を用いて、日本人の大学生と社会人の要約筆記者による要約文の資料を収集し、データの処理と分析を行った結果、次
のような成果が得られた。
 1.文章の読解による要約文の調査データの中から、日本人大学生計68名による尾括型の論説文を原文とする要約
文の原文残存認定作業の結果を修正して、原文残存率の統計的検定と表現類型の分類を行ったところ、原文中の重要な
内容を表す必須成分と、原文の文章構造に基づく要約文の尾括型の表現類型が解明された。
2.声優の朗読テープを用いた1と同じ原文の聴解による要約文のデータ(1997-9年度調査の日本人大学生2
集団約計84名と社会人要約筆記者2集団計121名)について、原文の要素の残存認定作業を実施し、統計的検定を
施して、各要約文の「必須成分」の残存形態に基づく要約文の表現類型を分析した。特に、大学生の読解要約文と社会
人要約筆記者の聴解要約文の表現特性の異同を検討し、両者の共通点とそれぞれに特有な表現特性を解明した。
3.上記1と2の大学生2集団による読解と聴解による要約文の表現類型を比較した結果、いずれも原文の尾括型の
文章構造類型を反映するという共通点が明らかになった。一方、聴解要約文のみに原文の具体的な内容を表す要素の残
存が認められた。
4.聴解要約文の調査に関して、読解要約文とは異なる方法論を開発する必要性が生じた。
まず、複数の集団による要約文の原文残存認定作業の結果から、いずれを必須成分とするかについて、新たな判断を要
したが、読解要約文を基準として聴解要約文の特性を把握した。
また、原文と同様の「情報単位」に各要約文を区分した上で、原文残存認定と表現類型を分類することによって、従来
よりも分析の精度が高まり、分類結果の妥当性が検証された。