表題番号:2000A-231 日付:2003/05/06
研究課題16世紀における英露交渉史の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 語学教育研究所 教授 諸星 和夫
研究成果概要
 本研究の目的は、16世紀におけるロシアの異文化接触をめぐって、それを招来せしめた様々な契機と要因、またその後世への影響について討究することにある。本研究では、とりわけこの時代の英露交渉史の発端と展開を主なテーマにしている。
 以上の点を検討するにあたり、もとより、この問題をめぐる両国の特殊事情を調査しなければならなかった。そのために大いに裨益したものとして、98年秋より一年間にわたる在外研究期間中の英国での予備調査を挙げることができる。とはいえ、この期間には専ら研究書誌や北東航路上の航海をめぐるイギリス側の社会背景などに時間を費やさざるを得なかった。特定課題研究のための助成を受けた本研究は、その延長線上にあり、引き続き、北東航路開拓の一層明確な動機づけ、従来見過ごされていた可能性のある両国に跨るハンザ同盟との関係等について論を進めた。これに関連して、夏期休暇中には、バルト海沿岸都市を歴訪、これら諸都市と往時のロシア市場との関係について史料の収集に努めた。史料収集は再度、春季休暇中にも展開した。
 一年間にわたる考察の具体的な成果として、いわゆる「イギリス人のモスコヴィア発見」が単に両国間の問題に止まらないことが一段と明確になった。同時に、この時代の両国の利害が必ずしも一致しないこと、かかる齟齬の修正が往時の両国間外交の主な目的であったことなどが確認された。
 今後の課題として、同時代史料の正確な読み込み、問題のマクロ的な把握、併せて、ロシアの国内事情から見たイギリス人到来の意味、ヨーロッパ人にとってのロシア情報の価値づけ、ことにリヴォニア戦争をめぐる環バルト海諸国の動向などに着目して、引き続き検討を重ねたい。