表題番号:2000A-226 日付:2002/02/25
研究課題高エネルギー重イオン粒子のLETに対する液体Xeの発光効率の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学総合研究センター 教授 菊池 順
研究成果概要
 近年開発された不安定核ビーム生成技術の確立に伴い安定線から遠く離れた中性子過剰領域における原子核の研究はめざましい発展を見せている。その中でも中性子ドリップライン付近での新同位元素の発見がいくつか報告されており実験が可能な軽い原子核から順に原子核の存在限界付近での探索が進められている。2004年現在建設中の理研RIビームファクトリー(RIBF)の運用が始まると従来の加速器では成し得なかったウランより軽いすべての元素の不安定核が生成される。特に酸素より重い原子核においては新同位元素の発見の可能性が高い。この新しい加速器を用いて生成断面積の小さなより中性子過剰でより重い原子核について研究を広げていく為に、それに対応した測定器の開発は非常に重要な次の段階へのステップとなってくる。具体的には、高計数率、高エネルギー分解能、放射線損傷に対する耐久力などの点で、より性能の高い測定器の開発が要求されている。液体Xeのシンチレーション光は特に発光の減衰時間が2nsec・22nsecとプラスチック・シンチレーター並に非常に短く、また光に対するW値も小さく、液体Xeはこの発光現象を利用して高計数率で利用可能な検出器の媒体とし期待されている。放射線医学総合研究所で数百 A MeVにまで加速されたC、Si、Ar、Feビームの突き抜けによるエネルギー損失で決まるLET(70~1000 MeV cm2/g)に対して発光量を測定した。そこでは上記のLET領域において予測値に近い発光量を観測し、他のシンチレーターに比べ比較的直線性を持っていることを実験的に確認することができた。また20Neビームを用いて理化学研究所で行なった照射実験の結果、液体Xe検出器の固有時間分解能として約30ps(sigama)、二つの光電子増倍管を用いた場合は22psが得られた。またエネルギー分解能は1.2%(2.5GeV Ne)であり、ビーム強度を1×106cpsまで変化させた場合にも出力信号の変化は1%以下であった。複数の光電子増倍管を用いれば、時間分解能・エネルギー分解能共にもっと改善できることを考慮すれば上の述べた目的にかなった検出器が製作可能であることがわかった。