表題番号:2000A-210 日付:2002/05/10
研究課題福祉応用を目的とした立体映像コンテンツに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際情報通信研究センター 専任講師 河合 隆史
研究成果概要
 本研究は、立体映像技術を、高齢者のリハビリテーションや緩和ケアへ応用するための取り組みである。前年度までの経緯として、指向性反射スクリーンによる立体ディスプレイを用いて、高齢者に立体映像を呈示し、立体視機能の調査を行うと共に、対象者の選定に関する検討を行ってきた。その結果、対象者選定の一基準として、ADLスコアを手がかりとすることが示唆された。
 これを踏まえて本研究では、この立体ディスプレイを歩行訓練機に搭載し、ADLスコアが比較的高い高齢者を対象として、立体映像コンテンツの観察を伴った歩行訓練を行った。呈示したコンテンツとしては、(1)奈良県薬師寺の建築物や仏像、(2)スペインの修道院、(3)公園のウォークスルー、を用意した。その結果、「歩行訓練中に映像があった方がよい」といった肯定的な意見と、「歩行訓練と映像観察というように複数のことを同時に行うのは困難だ」といった否定的な意見が聞かれた。それにより、高齢者の立体映像コンテンツに対する興味や意見を確認でき、高齢者を対象とする際の課題と、システム開発におけるハードウェア設計の改善が示唆された。また、この実験では、立体映像の観察時間は長くても約15分間であったが、自覚的な眼精疲労は認められなかった。
 立体映像の利用により、平面映像と比べてより高度な情報の呈示が可能となる。しかし、それを高齢者を対象とした福祉分野へ応用する場合、さまざまな課題が残されていることが、本研究を通して明らかになった。今後は、コンテンツに関する検討と評価に加え、システム設計に関するパラメトリックなデータの取得を行い、福祉領域での実用化を目指したいと考えている。