表題番号:2000A-207 日付:2002/02/25
研究課題関東大震災以後の浅草オペラと舞踊
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 助教授 杉山 千鶴
研究成果概要
 申請者は、1923年9月1日の関東大震災によって地方巡業を余儀なくされた、浅草オペラの俳優・女優たちに関し、1924年4月に森歌劇団として、再び浅草の地で旗揚げするまでの活動を、資料、すなわち地方新聞10紙において追求した。この結果、以下のことが明らかになった。
1)根岸歌劇団は根岸興行部の意図により解散し、森興行部の手によって森歌劇団として再生したという通説がある。しかし、実はその過程において紆余曲折のあったこと、また必ずしも「再生」という表現が相応しいわけではないことが、認められた。
2)震災時、浅草では金龍館の根岸歌劇団のみが公演していた。しかし資料によると、浅草オペラの初期に活躍した歌劇団や、オペラ俳優・女優が新たに組織した歌劇団が地方巡業を展開していたことが認められた。
3)常に舞踊ないしは舞踊を含む演目が上演されており、ダンサーとしてのキャリアを積んだ者のいることが認められた。
4)地方巡業はほとんどが成功しており、この影響を受けて、各地で歌劇団が組織された。
 上記の4点から、関東大震災以後の浅草オペラが浅草において衰退していく一方の、地方における状況を浮き彫りにされると共に、特に舞踊ないしは舞踊を含む演目に限れば、その特徴と震災以前からの変容、続く軽演劇への影響が明らかになった。