表題番号:2000A-205 日付:2002/02/25
研究課題中高年者の長期的筋力トレーニングに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 助教授 岡田 純一
研究成果概要
 加齢にともなう身体諸機能、筋力およびその機能の低下は傷(障)害を引き起こす要因として考えられている。そのため筋力トレーニングは高齢者においても身体機能を改善するための手段として、活用され始めている。しかし、ウエイトリフティングのような高強度の筋力トレーニングを長期間実施している者の実態は明らかではない。つまり高強度のトレーニングを中高年になっても継続している彼らの身体的特徴を明らかにすることで中高年者におけるトレーニングの有効性やトレーニングのあり方を検討する資料になるものと考えられる。そこで本研究の目的は筋力トレーニングを長期にわたって継続している中高年者に対して、過去・現在の運動習慣や生活習慣に関する調査および身体的機能に関する測定を実施し、生理学的な指標に基づいて筋力トレーニングの影響について検討することであった。ウエイトリフティング競技を実施しているT群9名(52.6±6.8歳)と同年代の一般成人C群6名(52.0±7.1歳)を対象とし健康、生活習慣、運動習慣に関する質問紙調査、有酸素性持久力、膝関節、股関節の伸展・屈曲筋力、重心動揺、特異動作パワー(スナッチ、スクワット)、骨密度(踵骨、腰椎)、筋断面積の評価を実施した。
 腰椎の骨密度においてT群1.435±0.288、C群1.049±0.191と有意に高い値を示したが、踵骨では差が認められなかった。T群がバーベルを挙上するという外的負荷に長期間曝され、腰椎への刺激が大きかったことが反映しているものと推察された。一方、筋力において先行研究で報告されている若年アスリートに匹敵する値を示すものもいたが、平均値ではC群と顕著な差を見出すことはできなかったが。とくに単関節で測定した膝および股関節筋力では、T群の全員が当該部位に変形やヘルニアといった整形外科的所見を有していたことが影響したものと考えられる。長期的な筋力トレーニングの実践は筋力および骨密度への効果が期待されるが、過度なものは障害の誘因となり得る。よって、健康づくりといった観点では至適な処方をさらに検討する必要性が示唆された。