表題番号:2000A-204 日付:2002/02/25
研究課題就寝前の高照度光環境は入眠潜時を遅らせる
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 山崎 勝男
研究成果概要
 高照度光は生体に対して、(1)交感神経系を亢進させる、(2)メラトニン分泌を抑制する、(3)覚醒度を上昇させる、という少なくとも3つの効果をもつことがこれまでに報告されてきた。しかし、照射直後の入眠過程については知られていない。そこで本研究では、就寝前の高照度光環境が入眠過程に及ぼす影響を検討した。健康な大学生7名(22.7±0.76歳)を対象に、Bright light(BL)条件とDim light(DL)条件の2条件を実施した。両条件は1週間程度の間隔を空け、被験者間でカウンターバランスをとった。各条件とも、実験1週間前より生活統制を行った。その後、1夜目を順応夜とする連続2夜の睡眠を実験室でとらせ、脳波、眼電図、筋電図を連続記録した。就寝前の40 min間、BL条件では2,500 lxの高照度光を照射し、DL条件では10 lxの室内灯下で過ごさせた。入眠期脳波の判定は10 sを1単位として、α波期、低振幅不規則波期、θ波期、頭頂部鋭波期、紡錘波期の5段階に分類した。実験の結果、DL条件では円滑な入眠を認めたのに対し、BL条件では入眠潜時が遅延した。特に、α波が消失しθ波の出現に至るまでの入眠初期段階に阻害は生じていた。睡眠の発現に関しては、生体の恒常性維持機能や生体リズム(2プロセス・モデル)、さらには外環境や身体状態などの関与が指摘されている。本実験では実験計画および環境制御によって、(a)入眠前覚醒の時間的長さと質、(b)前夜の睡眠の時間的長さと質、(c)サーカディアンリズムの位相、(d)外環境からの刺激、(e)身体内部からの刺激といった入眠に影響する要因を統制した。その上で、就寝前に高照度光を照射する条件と室内灯のみで過ごさせる条件を設定した。本研究から、就寝前の高照度光環境は、入眠期脳波段階の潜時を延長させ、円滑な入眠過程を阻害することが示唆された。