表題番号:2000A-200 日付:2002/02/25
研究課題構成主義と合理主義の認知行動療法-シャイネスに対する治療効果の差の検討-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 根建 金男
研究成果概要
 本研究では、シャイネス傾向の高い大学生30名を対象として、自己教示訓練群、役割固定法群、ウェイティング・リスト統制群の3群を設定して、治療効果の比較研究を行った。2週間の訓練期間内に、自己教示訓練群、役割固定法群では5回の面接を行い、その1カ月後にもフォローアップ面接を行った。訓練期間中、自己教示訓練では、対人不安と結びつく自己陳述の明確化と、合理的な自己陳述の自己教示、対処的な対人場面のイメージを促した。役割固定法では、自己描写法による自己物語の作成、ロールプレイング、シナリオに基づく日常生活での演技を促した。ウェイティング・リスト統制群では、2週間に2回の面接を、その1カ月後にはフォローアップ面接を行った。自己教示訓練群、役割固定法群とは異なり、特別な訓練は行わなかった。いずれの群においても、訓練の開始時と2週間後、1カ月後には自己評価尺度による治療効果の測定を行った。各指標の得点については3(群)×3(段階)の分散分析を行った。交互作用が見られた場合は、単純主効果の検定を行い、多重比較検定にはシェフェ法を用いた。分散分析の結果によると、統制群では変化が見られなかったにもかかわらず、自己教示訓練群と役割固定法群では、訓練直後のシャイネス傾向(早稲田シャイネス尺度)が改善され、自己の外面性にとらわれる傾向(公的自己意識)が解消された。さらに、役割固定法群のみで、日常生活のなかで有能に振る舞うという自信(一般的自己効力感)が強まり、社会的場面における自尊心(非社会的自尊心尺度)も上昇した。以上のことから、役割固定法は統制条件よりも有意にシャイネスを改善することができ、自己教示訓練と比べても遜色ない効果を発揮することがわかった。なお、レパートリー・グリッドの結果の分析については、専用のソフトによる計算が煩瑣であるため、もうしばらく時間を要する見通しである。