表題番号:2000A-195 日付:2004/01/29
研究課題経営合理化(リストラ)と労使関係・勤労意欲の変化に関する実証的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 河西 宏祐
研究成果概要
 (1)本研究は、最近の急速な経営合理化(リストラ)が労使関係にどのような変化を与え、それにともなって労働者の勤労意欲がどのように変化しているかを実証的に研究することを目的とした。具体的には各地に登場している「管理職ユニオン」を対象として調査研究を行った。
(2)その結果、各企業おいて長期不況に加えて、規制緩和に備えた経営合理化(リストラ)が急速に行われており、分社化などの組織再編、人事・雇用管理の合理化、労働時間短縮と引き替えの労働密度の強化など、ドラステイックな構造変化が進められている状況が明らかとなった。
(3)これにともなって企業内労使関係も緊張の度合いを強めており、圧倒的な経営優位型労使関係が形成されている。労働組合は交渉力を著しく弱体化させてきており、労働条件は低下の一方にある状況を具体的に把握した。
(4)この結果、職場労使関係は複雑な様相を帯びてきている。全般的には無組合状態型が増加しており、集団契約的労使関係から個人契約的労使関係へと移行している。なかには組合の職場組織の抵抗によって労使関係の緊張が高まっている事例もある。
(5)職場の労働者の勤労意欲(モラール)も複雑な様相を見せており、全般的には不満層が増大し、勤労意欲の低下現象が拡大している。逆に長時間・過密労働に献身することによって昇進・昇給を求める層の増加も目立っており、労働者内部の多層化現象が明らかとなっている。
(6)今後は職場労働者層の多層化現象に注目し、その一層の実態把握に努めると共に、それらの特徴を分類し、分析をより深める作業を進めたい。