表題番号:2000A-193 日付:2002/02/25
研究課題家計の消費活動による環境影響に関する研究-便利さの追求と環境保全の両立に向けて-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 鷲津 明由
研究成果概要
 本研究では、まず1995年環境分析用産業連関表の推計結果を用いて、国民一人あたり消費活動によって誘発されたCO2排出量を計算した。この計算には、たとえば衣服について衣服そのものおよびその原料となる化学繊維を作るときに排出されるCO2や流通段階において排出されるCO2などがすべて含まれている。それによると1995年に一人の国民の消費活動は5.5tのCO2排出を直接間接に誘発していた。どのような財からの誘発排出が多いかを剤別に見てみると、食料費関係、交通費関係、光熱費関係の消費による誘発が多かった。次に、同表を用いて「環境家計簿作成のためのCO2排出点数表」を作成した。CO2排出点数とは、ある財を1万円あたり消費するときに直接間接に排出されるCO2の量をCO21kg=1点として点数化したものである。これをみると、化学製品やエネルギー財を中心に排出点数の高い消費財(しかも比較的必需性の高い財)の目立つことがわかった。この点数表を「家計調査」の結果に当てはめることによって“平均的”家計の“環境家計簿”の試算を行った。それによれば、年齢や所得、居住地域の違いが各家計のCO2排出構造に特徴的な影響を与えていることが読み取れた。所得の低い世帯では光熱費からの、若い世帯では交通通信費からの、高齢世帯では食料費と教養娯楽費からのCO2排出構成比が大きい。地域別には寒冷地域では光熱費からの、北陸地域からは交通通信費からの、大都市圏からは食料費からのCO2排出構成比が相対的に高めである。
 次に、家計から出るCO2の多くはそのエネルギー消費によるものなので、家計のエネルギー需要構造に関する研究も行った。そこではまず、家計のエネルギー需要を捉えるとすればどのような統計が利用可能で、それぞれの特徴点はなにか、各統計から得られる情報の範囲はどうか、ということについてサーベイした。そのうち、家計のエネルギー需要をもっともきめ細かく捉えている『家庭用エネルギー統計年報』を用いて、そこでの観測事実を細かくまとめ、家庭用エネルギー需要関数の測定を試みた。その際、家電等の技術進歩によるエネルギー利用効率の変化を分析に取り入れることが重要と考えられた。そこでそのようなデータの収集に努めたが、望ましい情報が得られなかった、というのが現状である。
 ところで研究の過程で、家計の消費活動を含む経済活動が及ぼす環境負荷の大きさは、最近の情報技術の進展に大きく左右されると言うことに気づいた。そこで、今後このような研究に着手するための予備的考察として、本研究の分析的基礎となる産業連関表において、IT革命の進展がどのように捉えられているかを検討した。