表題番号:2000A-185 日付:2004/04/01
研究課題イルストラクチャー意思決定問題の最適化方法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 常田 稔
研究成果概要
 マネジメントにおける意思決定問題は、目標、制御変数(代替案)、非制御変数(環境要因)のすべてが完全に同定されている(well-structuredの)場合には、規範的アプローチによって最適化をはかることができる。しかし、その一部もしくは全部が同定できない(ill-structuredの)場合には、最適化の方法を適用することは不可能であり、記述的アプローチもしくは処方的アプローチによって研究することが普通である。
 我々は、昨年度、意思決定の当事者に意思決定の支援者が一連の質問を発することによって当事者が漠然と懐いている目標・代替案・環境要因に対するイメージを構造化し規範的アプローチ適用への道をひらく方法を開発した。
 本年度は、こうして構造化された意思決定問題に対して、当事者の経験的知識(ヒューリスティック)を用いることにより、効率的に最適解を求める方法を開発した。
 たとえば、地方自治体が行うべき道路補修問題は本来イルストラクチャーな構造を有しているが、その目標、非制御変数にある種の制約を与えることにより構造化すると、マルコフ型意思決定問題に帰着せしめることができることが我々の研究で既に分かっている。するとこの問題は、たとえば最小費用流法などを使って最適解を求めることができる。しかし、道路補修の当事者のヒューリスティックを体系的に利用すれば、最小流法よりも効率的に最適解に到ることが明らかとなり、そのためのプログラムを開発した。
 また、企業における新規事業に係わる意思決定も典型的なイルストラクチャー構造を持っているが、この問題に対しても、問題の当事者からのヒューリスティックを用いて、完全ではなく適度な数量化を行うことにより、完全な最適解ではないが、実用に供しうる解(満足解)は得られることが明らかとなり、そのための体系的方法を開発した。