表題番号:2000A-182 日付:2002/02/25
研究課題多国籍企業における海外事業活動の本社活動への影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 浦田 秀次郎
研究成果概要
 直接投資政策の自由化、規制緩和、さらには通信技術の発達などによって多国籍企業活動のグローバリゼーションが急速に進んでいる。多国籍企業のグローバル化は直接投資を主な媒体として進んでいるが、多国籍企業の進出先および企業の本国において様々な経済的な影響をもたらしている。進出先においては、雇用や生産の拡大、技術移転を通じての技術水準の向上といった好ましい効果が認められている。一方、多国籍企業の本国では、雇用や生産の縮小といった問題が発生しつつある。近年、急速に海外直接投資が拡大した日本では、産業の空洞化に対する懸念が議論されるようになってきている。
 以上のような状況を踏まえて、本プロジェクトでは海外直接投資の本社活動への影響を分析した。統計の入手可能性から日本企業を対象として分析を行なった。具体的には、企業レベルの統計を用いて日本企業の費用関数を推定し、海外直接投資を行っていることが本社の費用関数にどのような影響を及ぼすかを検証した。その結果、海外直接投資を行っている企業の費用水準は海外直接投資を行っていない企業と比較して低いことが統計的有為性をもって確認された。この結果は、海外直接投資を行っている日本企業は非効率的な単純労働集約的な活動を海外に移転させ、本社では効率的に行える高い技術を持った研究者や熟練労働者を集約的に用いる活動に特化していることを示唆している。
 本研究から得られた観察結果はいくつかの重要な示唆を提供している。一つは、本社における人材養成の重要性である。有能な人材を養成することで、本社活動のより一層の効率向上を実現させることができる。第2は政策的含意である。直接投資を促すことで日本に存在する資源の効率的使用が実現されることができるということから、直接投資を活発化させるために規制緩和や直接投資自由化を進めることが重要である。