表題番号:2000A-167 日付:2002/02/25
研究課題宇宙初期におけるインフレーションと粒子生成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 辻川 信二
研究成果概要
 本研究においては、宇宙初期のインフレーションとその直後の前加熱期における粒子生成および時空の揺らぎの発展を様々なモデルにおいて詳しく解析した。特に、カオス的インフレーションモデルおよび高次の曲率が効くインフレーションモデルにおいて、スカラー場が時空のスカラー曲率と非最小結合している系でも効率的な粒子生成が前加熱期中に起こることを示した。また、振動インフレーションおよびナチュラルインフレーションという素粒子理論が起源のモデルにおいて、インフレーション中においてもインフラトン場(インフレーションを担う場)の揺らぎが成長することを見い出した。また、スカラー曲率がインフラトン場以外のスカラー場と結合している、2つのスカラー場が存在する系で、大スケールで時空の揺らぎがインフレーション中に成長しうることを我々は新たに見い出し、これにより結合定数の強さに制限を与えた。また1つの場しか存在しない系では大スケールでの粒子生成および時空の揺らぎの成長が抑えられることを明らかにした。さらに高次元宇宙モデルにおいて、内部空間が球上にコンパクト化されているモデルでのカルツアクライン粒子の生成について調べ、その後の宇宙進化を妨げるような危険な粒子の過度の生成は起こらないことを示した。それに加えて、同様なモデルでのインフレーションと前加熱期での内部空間の振る舞いを調べ、内部空間を安定化させ、かつ宇宙背景輻射のスケール不変な揺らぎを生み出すことができることを示した。また、2つのスカラー場とフェルミオン場が存在するという現実的な系において、フェルミ粒子の生成の詳細な考察を行った。さらに、前加熱期の原始ブラックホールの生成について考察し、結合定数によっては原始ブラックホールの過剰生成が起こることを見出した。これにより、インフレーションのモデルにも制限を与えることが可能になるため、これらの研究は今後極めて重要になると期待される。