表題番号:2000A-150 日付:2005/11/20
研究課題マルチボディダイナミクスの解析を目的とした最適なDAEソルバーの設計と開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 吉村 浩明
研究成果概要
 極めて多くの剛体や弾性体が接続されたマルチボディシステムは、ジョイントなどによって機構学的にさまざまな拘束条件を受ける力学系であり、その数学モデルはスティッフかつ非線形性の強い陰関数形式の微分代数方程式群(DAE)として表される。本研究では、このようなDAEとしてモデル化されるマルチボディシステムの動力学解析のために、安定、高速かつ高精度なDAEソルバーの開発を目的として、以下の項目について検討を行った。
①DAEのヤコビ行列の非ゼロ要素に関する位相構造の解明とニュートン法の高速化アルゴリズムの開発
②拘束安定性の評価・検討、特にBaumgarteの方法、GGLの方法、及び射影法などによる拘束条件の安定化と演算精度に関する調査。
 ①に関しては、まずボンドグラフに基づいてマルチボディシステムの数学モデルをDAEとして定式化する方法を提案し、その上で、数値解析には、DAEの微分項をBDF法によって差分化して得られる非線形代数方程式をニュートン法で求解するスパースタブロー法によるアルゴリズムを開発した。特に、非線形微分代数方程式で表される力学的、運動学的関係式の入出力関係に注目して、ヤコビ行列に出現する非零要素の位相幾何学的構造を明らかにし、この位相構造からニュートン法における逆行列計算を陽に生成する手法を提案した。また、2部グラフを用いて、これがピボット選択においてパーフェクトマッチングを与える合理的手法であることを示した。②については、特異点を有する4バーリンク機構の運動解析を例として、指数1のBaumgarteの方法を用いた場合、指数2のGGLの方法を用いた場合、及び射影法を用いた場合について数値実験を行った。その結果、Baumgarteの方法、GGLの方法ともに拘束条件の安定化をある程度実現できたが、射影法を用いた場合が最も安定化が良く、より数値精度の高い解を得られることが分かった。また、Baumgarteの方法、GGLの方法ともに射影法を合わせて用いることにより、より高精度な拘束安定化ができることも判明した。今後、引き続き上に述べた①と②の結果を組み合わせて、DAEの数値的最適ソルバーの完成を目指す。