表題番号:2000A-149 日付:2002/02/25
研究課題光学活性シントンの創製:光学活性テトラヒドロフラン、ピラン類の立体選択的合成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 中田 雅久
研究成果概要
 我々はアセト酢酸エステルジアニオン1がエピブロモヒドリン誘導体と反応し、テトラヒドロフラン(THF)、ピラン(THP)誘導体をワンポットで高選択的に与えることを見い出したが、今回、その反応経路を明らかにし、光学活性な生成物も入手容易な出発原料から純度よく得られることが判明したので報告した。
 一方、D-マンニトールより二工程で得られる(R)-イソプロピリデングリセルアルデヒドから出発して、数工程で(RE)-2-hydroxy-5-methoxybenzyloxy-3-penten-1-ol 2を得た。このジオール体を用い、まず、環状硫酸エステルの合成を検討した。SO2Cl2を種々の塩基存在下に2に反応させ、環状硫酸エステルの合成を試みたが、(E)-4,5-dichloro-1-methoxybenzyloxy-2-pentene 3 が得られるのみであった。また、SOCl22に作用させ、環状亜硫酸エステル4とした後、酸化する方法も試みたが、基質が分解するのみで環状硫酸エステルは得られなかった。31と反応させてみたが、脱離反応が優先し、(E)-2-chloro-5-methoxybenzyloxy-1,2-pentadiene 5が得られたのみであった。この脱離反応が優先した原因は一級脱離基の脱離能が低いためと考え、2の水酸基を別の脱離基に変換し反応を行った。二級水酸基はアリルアルコールであるため反応性が高く、スルホン酸エステルなどでは反応性が高すぎ、生成物を単離できなかったので、より脱離能の低いフェニルエーテルへと変換し、一級の水酸基はブロモ体に変換した。このようにして得た反応基質を1と反応させたが、5と同様なジエン体が得られるのみで、所望のTHF誘導体は得られなかった。
現在は、1の代わりに(E)-4,5-epoxy-2-pentenol誘導体をジアニオンと反応させた後、脱水させ、段階的に所望のアリルビニルエーテルを含むTHF誘導体の調製を検討中である。