表題番号:2000A-148 日付:2002/02/25
研究課題電極表面反応の理論設計
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 中井 浩巳
研究成果概要
 本研究では、(1)電極表面のSTMシミュレーションを行い、正しい理解を理論的に与えること、(2)電極表面で起こる触媒反応と電子移動を理論計算により検討し、そのメカニズムの解明を目指した。テーマ(1)として、Au(111)面に吸着したSulfateに対して、吸着構造とそのSTM像を理論計算により決定することを試みた。吸着構造はon-top-site eclipse型<hollow-site staggered型<hollow-site eclipse型という順に安定となることがわかった。この結論は、OsawaらのSEIRASの結果とも一致している。さらに、eclipse型吸着構造についてSTM像について検討した。吸着SulfateのバンドはFermi準位付近には現われていないため、通常考えられているTipと吸着系の間のHOMO-LUMO遷移では吸着Sulfateの像は得られない。しかし、電極表面特有の遷移を考えることにより、吸着SulfateのSTM像の再現に成功した。テーマ(2)として、無電解鍍金における還元剤の酸化反応メカニズムについて検討した。その結果、ジメチルアミンボランや次亜リン酸などの還元剤については、これまで広く受け入れられてきた脱水素が先行し3配位化合物を経由するというMeerakker機構よりも、水酸基の配位が先行し5配位化合物を経由するという新たな反応機構が理論的に支持された。溶媒効果を考慮した計算結果から、還元剤が極性溶媒中では自発的に酸化されないが、バルク溶液に比べ誘電率が小さい電気二重層中では酸化されやすくなっていることが示された。さらに、析出金属の自己触媒作用により還元剤の酸化が起こりやすいことが理論的に示された。