表題番号:2000A-147 日付:2002/02/25
研究課題ビルディングブロック複合型前駆体からのAlN/BNセラミックコンポジットの合成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 菅原 義之
研究成果概要
 セラミックコンポジットは、単一のセラミックスでは得られない多彩な性質を示すことから、新しい材料として期待されている。本研究では、カゴ型構造や環状構造を持つ化合物をビルディングブロックとして利用し、AlN/BNセラミックコンポジットの前駆体を合成した。出発物質としては、カゴ型構造を持つ(HAlNiPr)mと環状構造を持つボラジン〔(HBNH)3〕を用いた。両者を異なるB/Al比で仕込み(B/Al=0.5、1、2、3)、トルエン溶媒中、40℃で40時間反応させると、水素の発生が認められた。前駆体の27Al NMRからはAlN4環境が出現したことが明らかとなっており、NH基とAlH基の間で脱水素反応が起こったことが明らかとなった。また、前駆体の11B NMRからはBN3環境が確認されており、(HBNH)3間の脱水素反応も進行したことが推定された。しかしながら、前駆体中のB/Alの値は仕込みの値から大きく減少しており、仕込みのB/Alが最大の場合(B/Al=3)でも、生成物中ではB/Alは0.72まで減少した。これは反応が進行し難いことと、(HBNH)3が揮発性であることによると考えられた。
 前駆体をAr雰囲気下1600℃で熱分解したところ,黒色の粉末が得られた。収率はB/Al比の増加に伴って向上した。(B/Al=0.5、40%;B/Al=3、50%)。組成分析から、いずれの試料においても、生成物中のB/Al比は前駆体中の値から増加しており、これはAl成分が熱分解中により多く失われたことに対応すると考えられた。X線回折分析の結果、AlNだけが結晶相として検出された。しかしながら、IR分析によりν(B-N)に帰属される吸収帯が検出されたことから、非晶質のBNが生成しているものと考えられた。また、生成物中に炭素が存在することから、非晶質炭素の存在も推定された。透過型電子顕微鏡観察では、非晶質のマトリクス中にAlN微粒子が存在する構造であることが明らかとなった。