表題番号:2000A-142 日付:2002/02/25
研究課題石炭灰から高機能性アルミノ珪酸塩素材への迅速転換に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 山﨑 淳司
研究成果概要
 国内外5箇所の火力発電プラントから排出された石炭灰の化学組成、組織・構造および熱的性質について検討をおこなった。
その結果,今回検討した試料のうち北海道奈井江町のプラントから排出された石炭灰は,石英・ムライトから構成される核部に比較して非晶質アルミノ珪酸塩の外殻が多く,金属元素や炭質分が少ないことから,ゼオライトなどの高機能性アルミノ珪酸塩結晶へ転換するのに最適な出発物質として選択された。
 この石炭灰を開放型の外部加熱式反応槽内でNaOH水溶液中,70℃,1日間水熱処理することにより,結晶質の核部を残したまま球状の外殻部を高結晶性のX型ゼオライトへ転換することができた。
得られたゼオライト結晶は径2μm以下の微粒子集合体であった。
 さらに水熱処理過程で,X型ゼオライト→P型ゼオライト→ハイドロソーダライトの順に相変化すること,また同条件下で温度を変化させるとA型ゼオライトおよびアナルシムが生成することがわかった。
 次に同石炭灰をテフロン製密閉容器にNaOH水溶液とともに封入し,温度・圧力制御マイクロ波加熱装置により水熱処理を行ったところ,50 psi以下の低圧条件下1時間処理でP型ゼオライト及びハイドロソーダライトが生成すること,さらに100~150 psiの比較的高圧条件下では2時間処理で核部の結晶相が分解・再結晶化してハイドロソーダライト単相が生成し,さらに高圧条件下ではカンクリナイトの共生成が認められた。
 これら一連の処理について,溶液濃度,温度・圧力,マイクロ波出力などの諸条件と同時に収率も考慮しながら各種ゼオライトの生成条件を検討した結果,マイクロ波加熱によるアルカリ処理では1時間以内に石炭灰の結晶質核部が分解されるが,迅速に反応が進行してハイドロソーダライトへ転換されることから,FAU型ゼオライトを選択的に合成するには,反応遅延剤または種結晶の共存を必要とすることがわかった。