表題番号:2000A-137 日付:2002/02/25
研究課題モジュラー曲線Xo(N)とそのHecke代数対応の数論研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 橋本 喜一朗
研究成果概要
 有理数体上の楕円曲線に関する「谷山―志村予想(Wilesの定理)」の一般化として、Serre-Ribetにより高次元のアーベル多様体に関して「アーベル多様体A/QがJO(N)のQ-因子と同種となる条件は、AがGL(2)型であることである」という予想が提唱されている。我々は、これまでの研究で、この予想および関連する問題を研究し、代数体上のQ-curveと呼ばれる楕円曲線や、種数2の代数曲線で、ヤコビ多様態が四元数上をもつもの(QM-curve)について、予想を証明した(中央大学の百瀬氏等との共同研究)。さらにGL(2)型の「アーベル多様体A/Qを組織的に構成・分類するという、具体的な研究を行ない、
 (i)Jac(C)がGL(2)型となる代数曲線C/Qのパラメータ族の構成、
 (ii)2次体上のQ-curveおよび、対応するGL(2)型アーベル曲面(Jac(C))の族を構成、
 等々の結果を得た。本研究では、上記予想の一般証明の重要なステップとなる、モジュラー曲線XO(N)のHecke代数対応Hn(n=2,3,4,…)の代数曲線としての定義方程式を求め、合同関係式をXO(N)のmodularityに依存しない形で記述し、そのメカニズムを解明した。この結果の主要部は、理工学部助手の金山直樹氏との共同研究であり、論文にまとめる作業を継続中である。超楕円的なモジュラー曲線の場合に、小さなにたいするHnの方程式については、1999年秋の日本数学会で発表済みである。
 当初の目標はさらに、Hn自身をQ上の代数曲線とみてHasse-Weil L-関数を調べ、その解析接続と関数等式を研究することであったがこの課題については、2、3の特殊な例を扱うに留まった。モジュラー曲線の代数対応に対する、このような視点からの研究はこれまで皆無であり、極めて興味深い結果が期待でき、今後の大きな課題である。