表題番号:2000A-136 日付:2002/02/25
研究課題医療現場における有害化学物質の工学的対策に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 名古屋 俊士
研究成果概要
 近年の医療の発達はめまぐるしく、一昔前は難病といわれた病気も新しい薬品や治療方法の開発で、簡単に手術や治療ができるようになっています。その一方で、医療現場では、医療従事者の感染症の増加から消毒や滅菌が強化されるのに伴い、特に発癌性物質として「1」にランク付けされているエチレンオキシドやグルタルアルデヒドなどの使用が増加しています。そうした流れの中、本研究では、手術室、内視鏡消毒室、病理検査室で使用される有機溶剤等から発生するガス状物質の濃度測定を実施し、その実態把握と、その実態に応じた対策を実施するとともに、医療現場での測定の重要性及び義務化に向けた準備作りを行うことを目的とした。
 まず初めに、麻酔及び内視鏡洗浄剤で使用する各種有機溶剤を測定するための吸着剤の検討及び捕集後の吸着剤からの脱着溶媒について基礎実験を行い、各種有機溶剤に対する測定及び定量条件を確立した。さらに、医療現場で、医療従事者への曝露濃度測定及び環境濃度測定を実施し、溶剤の取り扱い状況により人体及び環境への影響の実態を報告した。一例ではあるが、内視鏡洗浄室における洗浄機での洗浄作業時、洗浄機からのグルタルアルデヒド漏洩濃度は作業前0.06ppm、洗浄中0.06ppm、消毒中0.05ppm及び洗浄終了0.06ppmとなり、洗浄機を用いた洗浄では、大きな差が認められなかった。また洗浄漕での洗浄では、作業前0.08ppm、洗浄及び消毒中0.27ppm及び洗浄終了0.11ppmとなり、洗浄機を用いた場合に比べて洗浄中蓋が無く、洗浄漕内を撹拌するために環境への漏洩濃度が大きくなった。換気装置の設置されている内視鏡洗浄施設では、幾何平均値が0.15ppm~0.08ppmであった。こうした実態報告をするとともに、内視鏡消毒室、手術室、病理検査室などで、その環境に適応した換気装置の設置等の工学的対策等を実施し、医療現場における作業環境管理の成果を上げた。