表題番号:2000A-132 日付:2002/02/25
研究課題付加慣性機構を用いた絶対免震構造システム
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 曽田 五月也
研究成果概要
 本研究で対象とする構造システムは免震構造用のダンパーとして新たに考案した付加慣性機構を利用するものである。線形のバネに支持された上部建物と地盤との間を回転する振動子を介して接続することにより、その振動子の固有周期に対応する地震動の卓越周期成分の入力を遮断することを目的としている。リニアモーターを利用して製作した小型振動台による実験を基本にして検討を進め、種々の実験結果と解析結果との整合性を確認の上で、さらに幅広く、提案システムの汎用性を解析的に検討した。得られた知見のなかの主要なものは下記のとおりである。
1) 正弦波入力による実験・解析からは、定常応答の状態では提案構法がその振動子の固有周期と同じ周期の入力波を遮断する特性を効果的に発揮することを確認できたが、外乱の作用開始直後や作用終了直後の非定常な状態においては変位・加速度応答共に大きな値を示すことが明らかになった。
2) 地震動を模擬した非定常ランダムな外乱の作用を想定した実験・解析からは、振動子の固有周期と等しい成分の地震外乱を十分には遮断できず、変位応答は低減されるものの、加速度応答の低減は難しいことが判明した。
 地震時の地震表面の振動は比較的広い範囲にそのスペクトルを有するために、1個の慣性質量により上部建物への外乱の伝播を遮断することは難しい。従って、本構法の適用性を高めるためには、慣性質量を複数にすることや、振動子個々の減衰特性の最適化を計るなどの検討がさらに行われねばならない。