表題番号:2000A-131 日付:2002/02/25
研究課題コンクリート構造物のライフサイクルコストに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 関 博
研究成果概要
 コンクリート構造物は社会基盤を支える重要な施設であり、今後とも施設を適切に維持するための必要性は論を待たない。さらに、地球資源の有効利用や環境保護のためには、新設や既存の施設をできるだけすくないエネルギー消費により永く活用することが大切となる。
 メンテンナンスを有効に実施するためには、構造物の時間軸を考慮した挙動を把握する必要があり、さらに、これらをもとにミニマムコストの要因を精査して、それぞれ要因のウエイトを明らかにして、適切な維持管理方策を採用する必要がある。今年度は、RC部材における塩害による鉄筋腐食を取り上げて、塩化物の浸透、腐食速度などのバラツキを考慮し信頼性工学を応用して、ライフサイクルを定める要因の重みを感度解析により実施した。解析にあたっては、ばらつきを有する因子(かぶり、塩化物イオンの拡散係数、腐食速度など)は対数正規分布にしたがうと考え、モンテカルロ法によるシミュレーションを行なった。なお、既往の調査データから、コンクリート表面の塩化物量は数種の数値に固定し、ひび割れの前後での腐食速度の平均値は相違させている。
 解析の結果によると、(1)鉄筋のかぶりや塩化物イオンの拡散係数は鉄筋の腐食量を定める大きな因子である、(2)コンクリート表面の塩化物量が多いと腐食発生時期への影響は小さいが、その後の内部鉄筋の腐食量を増加させる、(3)コンクリート表面の許容ひび割れ幅に対応するライフサイクルコストを考慮した適切な補修時期を提示することができる、などを明らかにした。