表題番号:2000A-129 日付:2002/07/15
研究課題共形平坦多様体上のDirac作用素
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 郡 敏昭
研究成果概要
 1.報告者は四次元共形平坦多様体上の共形場理論を目指して、この数年の一連の研究において、そのための道具つくりを行ってきた。四次元空間においてディラック作用素によるスピノール解析を行い2次元複素平面上の関数論と類似の理論が作れることを一昨年・昨年に示した。本研究では、その続きの大域的理論として、四次元共形平坦多様体上におけるスピノール解析を行いリーマン面の理論と類似の理論、とくに与えられた極を持つ有理形スピノールの空間の次元を調べ古典のリーマン・ロッホの定理に相当することを証明した。開リーマン面の正則関数の高次のコホモロジーはすべて消えるが、これに対応して四次元共形平坦多様体上で(ディラック作用素に関する)調和スピノールの高次のコホモロジーが消えるという予想は途中まで証明され、これは成り立つと思われるが今後の課題である。
 2.上記研究と平行して報告者はWess-Zumino-Witten2次元共形場の理論を四次元に拡張することを試みて成功した。 四次元共形平坦多様体の境界となる3次元多様体の同境類のカテゴリから直線束のカテゴリへのファンクターで、ファインマン経路積分の性質を抽象した公理を満たすものを構成した。この際、基礎的な役割を果たすのが、3次元球面からリー群への写像全体の空間の上で定義されるある種の主束であり、それは互いに双対なもの二つの主束で、位相的には U(1)-主束となっている。これにより3次元球面からリー群への写像全体のつくる群の互いに双対な可換拡大が二つ得られ、これはそのこと自体位相幾何として興味あることである。この理論は、接続による高次の平行移動の理論、Deligne-Kostant理論の高次元類似やgerbeの理論との関係が期待され、今後興味ある展開を期待できる。この結果は現在 論文として投稿中である。