表題番号:2000A-128 日付:2002/02/25
研究課題Si系超薄膜多層膜を用いた光子材料の作製とそのデバイス化の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 加藤 勇
研究成果概要
 当研究室では、二重管式同軸線路形マイクロ波プラズマCVD装置をもちいて、新しい光子材料として超薄膜多層構造をもつa-Si:H/Si3N4多層膜について研究開発をおこなってきている。二重管式同軸線路形マイクロ波プラズマCVD装置をもちいて、低ガス圧下において水素化アモルファスシリコン膜および窒化シリコン膜による超薄膜多層構造の作製に成功し、さらに1層の厚さを数Å単位で制御できることが分かった。また、光学的にもアモルファスシリコン層の厚さを変化させることで、光学的エネルギーバンドギャップを1.8~2.5[eV]と制御できることも分かった。
 今年度は主に基板温度が多層膜に与える影響について研究を行った。SEM像やX線回折ピーク図から多層膜作製時におけるSiH4ガス流量を少なくする事によって、堆積速度を遅くすることにより基板温度を変化させても界面が均一で鮮明な多層膜を作製できる事が分かった。さらに基板温度を高くするにしたがいダングリングボンド密度は大きくなり、光学的エネルギーバンドギャップは小さくなる事が分かった。
 また、導波光の波長λよりも十分に薄い超薄膜多層構造をもつ光導波路は、特異な伝搬特性をもつことが期待できる。そこで我々は、上記のa-Si:H/Si3N4超薄膜多層構造膜をコア、窒化シリコン膜をバッファ層としてスラブ導波路を作製した。さらに、本導波路の持つ伝搬特性として、TMモードを透過し、TEモードはカットするという偏光特性があることを世界ではじめて明らかにした。
 この光導波路に用いる多層膜を基板温度を変化させて作成し、その光伝搬特性に与える影響についても研究を行った。その結果基板温度が250[℃]から400[℃]で大きな消光比を得られる事が分かった。しかし、基板温度が400[℃]より大きくなると吸収係数が大きくなるため、光導波路としては向かなくなるので、基板温度250[℃]が最適と考えられる。