表題番号:2000A-120 日付:2002/05/13
研究課題通信ネットワークにおける費用配分問題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 専任講師 毛利 裕昭
研究成果概要
 (1)関連文献のサーベイ
 本研究の基礎理論は、グラフ理論、組合せ最適化理論(数理計画法)、ゲーム理論と多岐にわたる。Web of Science等のデータベースでこれらの最新研究の動向を調査した。グラフ理論に関しては基本的な理論のみで十分と考えられた。また、組合せ最適化理論では、質の良い近似解を高速で求める多くの近似解法発表されおり、その一方で厳密解法は分枝カット法を援用したものが多く発表されている。最終目的が費用配分であることを考えると、計算量の問題を一旦考慮せずに、厳密解法の研究を中心にサーベイを行なった。そのことを踏まえて組合せ最適化問題を元問題とするゲーム理論に関するサーベイを行なった。注目すべきは、オランダのTijsのグループによる研究結果で組合せ最適化問題の性質を利用した結果を次々と発表している。
 一方、応用面の視点からの研究をサーベイすると、通信ネットワークの数理モデルは、ロジスティクスの数理モデルとの共通する点が多く、考慮すべき問題点も共通する部分が多いことが判明した。この立場からも並行してしてサーベイを行なった。その成果は、早稲田商学第387号に掲載した論文で発表済みである。また、学会発表では日本OR学会の統合プロジェクトG3研究部会で2000年10月にすでに発表済である。
(2)既存の通信ネットワークモデルに対する費用配分アルゴリズムの検討
 既存の通信ネットワークに関する費用配分アルゴリズムは、それほど多く発表されておらず。ネットワークの規模が小さければGranotらによる研究が初期研究としては、有効であると考えられるが、実用面を考えると久保らのJORSJにおける論文が唯一と言えよう。久保らが元にしている組合せ最適化問題のモデルを数理計画ソフトで解かせてみても十分といえる。しかし、久保論文で提案されている費用配分は、コアの概念を元にした近似的解による費用配分である。そこで、筆者は厳密な意味で費用配分解を考え直すこと、さらには、伝統的なゲーム理論の解によらない、解の公理系を考案している段階である。
(3)新しい通信ネットワークモデルの検討
 元通信事業者の勤務であった学会の同僚から通信ネットワークの数学的表現自体についてインタビューし、(2)で検討されていたような抽象度の高いモデルで何が、現実の問題解決に不足しているかを検討した。抽象化モデルに何が不足しているかは判明したが、現状の数学的定式化に不足しているものを現段階で考慮すれば、理論的に取り扱いのできないモデルであるだけでなく、近似的な解法さえも考えるのが困難なモデルとなることが判明した。
●今年度得られた研究成果は、アカデミック・レベル抽象数学モデルのサーベイ。現実面からの要請のヒアリングを行ない、抽象数学モデルへの検討事項を明確にしたこと。そして、費用配分解の計算量を減らすことを目的にした公理系の再検討までである。