表題番号:2000A-099
日付:2002/02/25
研究課題清代初期のチベット・モンゴル・満州関係史
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 教育学部 | 専任講師 | 石濱 裕美子 |
- 研究成果概要
- (1)「ガルダン・ハルハ・清朝・チベットが共通に名分としていた「仏教政治」思想」『東洋史研究』pp.35-62
(2)『チベット仏教世界の歴史的研究』東方書店
チベット・モンゴル・満洲の三国は、チベット仏教を紐帯として一つの文化圏を構成する。このチベット仏教世界と中国の歴史的関係について語る研究は数多いが、原史料を用いてなされたものは少ない。原資料にあたって記された数少ない良心的な研究も、その場合の原史料は漢語史料であるため、それらの研究は自ずと中国側から見た歴史観のみを反映したものとなっている。中国とチベット・モンゴル・満洲関係を明らかにしようとした場合、一方の中国側の事情を述べる文献ばかりを用いていて正確な歴史像は描ききれない。そこで、私はチベット・モンゴル・満洲語で書かれた資料を用い、両者の関係の本質を追求してきた。業績の(1)は、従来漢文版ばかりが用いられてきた『親征平定朔漠方略』(17世紀後半のモンゴル・チベット・中国関係を語る一級の史料)を、原版である満洲版を検討することによって、翻訳である漢文版においてはその存在が抹消されていた「仏教政治」という概念を抽出し、この概念が三国関係の外交の基本と捉えられていたことを明らかにしたものである。
業績の(2)は、一七世紀から一八世紀にかけてのチベット、モンゴル、満洲三者関係について筆者が学会誌や紀要等に発表してきた論文に対して、その全てに手直しを加え、また新出史料に基づく知見を書き加える等して一冊の本にまとめ発表したものである。五章、七章、八章を除く部分は一九九七年一月に『チベット仏教世界の歴史的研究――菩薩王としてのチベット、モンゴル、満洲王侯の事績について――』と題して早稲田大学文学部に学位論文として提出し、同年七月に審査を経て学位を取得した。
さらに、2000年3月には中国チベット自治区の区都ラサに滞在してポタラ宮の実地調査を行った。