表題番号:2000A-044 日付:2002/02/25
研究課題憲法解釈方法論という観点からの、法の科学の適切な概念構成の理論的探究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助手 江原 勝行
研究成果概要
 本報告書提出者による昨年度の研究活動においては、近代立憲主義の自明性が揺らいだ結果、その代替理論として現代国家の成立期に登場した、19世紀末から20世紀初頭の公法学説の中でも、現代の憲法現象における諸問題の解決にとって有益な示唆を与えるものとして、所謂「制度体理論」が憲法学の研究対象として採用されるべきであることが結論づけられ、フランスにおけるかかる理論の唱道者であるモーリス・オーリウの公法学説、そして、イタリアにおけるかかる理論の唱道者であるサンティ・ロマーノの公法学説に関する基礎的研究が行われたが、本年度の研究活動においては、そのような基礎的研究の成果に基づき、後者のサンティ・ロマーノの公法学説が憲法学上有しうる現代的意義を探求する論文が早稲田法学誌上において発表された。サンティ・ロマーノは、モーリス・オーリウとは異なる独自の「制度体理論」を発展させつつ、20世紀初頭から中葉にかけてのイタリア公法学説をリードし、その結果、今なおイタリアにおける最も著名な公法学者と言える存在であるが、日本におけるイタリアの公法制度・公法思想に関する研究が、フランスのそれに関する研究と比較して著しく遅れをとっているために、ロマーノの公法学説についても、日本の公法学においてはその本格的な紹介・検討が皆無に等しかった。因って、本報告書提出者の論稿のうち、早稲田法学76巻1号においては、ロマーノの業績の中でも、主として(憲)法規範生成の契機若しくは憲法法源生成観に関連する部分に焦点が当てられつつ、ロマーノの公法学説の全体像を提示する作業が試みられた。この作業を受けて、76巻2号及び4号においては、ロマーノの公法学説が、イタリアにおけるその後の公法学説によって、如何なる様式を以って受容若しくは批判されてきたのかという問題が、彼の法理論の解釈者達が依拠した観点を柱立てとして包括的に検討された。なお、イタリアの公法学説史上、ロマーノの公法学説が如何なる刻印を留めたのかという、本報告書提出者の論稿の帰結部分を構成する論点に関する研究に本年度の終盤は充てられた。