表題番号:2000A-041 日付:2002/02/25
研究課題60・70年代豪州演劇史の一次資料収集とその分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 専任講師 澤田 敬司
研究成果概要
 ヴィクトリア州立図書館の貴重書セクションであるラトローブ図書館には、60年代末から70年代にかけてオーストラリア小劇場運動の中核を担ったメルボルンの劇団、オーストラリアン・パフォーミング・グループ(APG)の資料を集めたアーカイブがある。劇団の定例ミーティング記録から、財務記録、パンフレット、衣装・舞台装置コンテ、未出版上演台本にいたるまで、包括的な未公開資料をおさめたこの膨大なアーカイブへ実際に赴き、特にAPGの初期の活動において重要な意味を持っている2作品、J・ヒバード作『ディンブーラ』とJ・ヒバード&J・ロメリル『素晴らしきメルボルン』に関する資料を、分析した。現在出版されている2作品のテクストや、両作品について論じている著書からは知りえない様々なデータを得ることが出来た。その中には、共作・改訂のプロセス、演出プラン、作品の着想を得た資料などがふくまれている。
 そもそもこの両作品を詳細に分析した論考はオーストラリア本国においても極めて乏しく、あってもこのような一次資料を元に分析を行ったものはない。その点で、2作品に関して私がこれら一時資料をもちいて行っている作品論では、平面的な戯曲のテキストからだけでは浮かび上がってこない、舞台作品としての立体的な様相を、ある程度まで照らし出すことが出来ると思う。
 今回の研究で、APG初期の2作品の現存する資料の整理と分析を行うことが来たが、同時にAPGアーカイブ全体の規模や資料価値を把握することが出来たので、今後APGを中心とした豪州演劇史全体を視野に据えた規模の大きい研究に入っていく際、スムーズに作業を進めていくことが出来るだろう。その意味でも、今回の研究には価値があったと考える。