表題番号:2000A-040 日付:2002/02/25
研究課題民事訴訟の多元化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助教授 勅使川原 和彦
研究成果概要
 本研究助成を活用しながら、以下の二つのプロジェクトを行なった。
・まず第一に、日弁連法務研究財団委託研究「21世紀の民事訴訟」研究会に学者側委員として関与し、ADR・ファストトラック・専門訴訟・執行のアウトソーシングそしてまた迅速審理(6ヶ月審理)モデルなど、本質的に同種の判決手続一つしか選択肢のない民事訴訟を多元的に運用していくプランの検討を行なった(個人としては、「専門的知見を要する民事訴訟の判断主体」の将来像を主として担当)。
 これらの成果は、2001年2月16日開催の弁護士会館におけるシンポジウムにおいて発表された(後日「判例タイムズ」誌に掲載予定)が、残念ながら病を発して入院のやむなきに至り、当初予定されていた参加(雑誌向け論文執筆含む)ができなかった。
・第二に、内閣設置の司法制度改革審議会の委託調査研究として、我が国司法制度史上初めての大規模な「民事訴訟利用者調査」を、菅原郁夫・千葉大教授、大渕憲一・東北大教授と共に行ない、2001年2月13日開催の司法制度改革審議会第47回会議において、報告した(議事録等は、http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/index.html参照。2月14日付朝日新聞等でも報道)。「報告書」は、600ページを超える大部のものであり、大きく分けて「利用者にとっての訴訟の位置づけ」「訴訟利用・アクセスの障壁」「訴訟経験と裁判官・弁護士等への評価」「我が国裁判制度への評価」という4つの柱について、我が国の現実の訴訟の利用者像を極めて多角的に検討した資料的価値の高いものであるが、政府系審議会への報告書という性質上、個人的成果としての公刊はできない(審議会事務局によれば、いずれ政府系HPにおいて、公表を検討中とのことである)。訴訟についての現状に関する、これらの綿密かつ大規模な基礎調査と分析は、向後の民事訴訟の精確なニーズを探り当てる初めての契機となっているものと思われる。